2026.09.02外国人技能実習制度が廃止→育成就労制度へ|建設業への影響と対応策
2024年6月、外国人技能実習制度を廃止し新たに「育成就労制度」を創設する法律が成立しました。2027年4月1日の施行に向けて建設業界では受け入れ体制の見直しが急務となっており、特に外国人材を活用している企業・これから活用を検討している企業にとっては避けて通れない重要テーマです。本記事では、育成就労制度の概要・技能実習制度との違い・建設業への影響と対応策を整理します。外国人材の採用・定着に取り組む建設企業の情報はaoiroサーチの企業検索でも確認できます。
目次
技能実習制度廃止の経緯と育成就労制度の概要
外国人技能実習制度は「国際貢献・技術移転」を目的とした制度として運用されてきましたが、実態として低賃金労働・人権侵害・失踪者の増加といった問題が長年指摘されてきました。こうした状況を受け、政府は2023年に有識者会議の最終報告を取りまとめ、技能実習制度を廃止し新たな「育成就労制度」を創設する方針を決定。2024年6月14日に改正出入国管理及び難民認定法等が成立し、2027年4月1日に施行されます。
育成就労制度は「人材育成と労働力確保」を目的として明確に位置づけられており、技能実習制度とは制度の根本的な目的から異なります。3年間の就労を通じて「特定技能1号」水準の技能・日本語能力を身につけることを目標とし、修了後はスムーズに特定技能1号へ移行できる設計になっています。
・2024年6月:育成就労法成立・公布
・2027年4月1日:育成就労制度の施行開始
・技能実習制度:施行後3年間は経過措置として並行運用される見込み
※経過措置の詳細は今後の政令・省令で定められます。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公式発表をご確認ください。
技能実習制度と育成就労制度の主な違い
両制度の主な相違点を以下の表で整理します。受け入れ企業にとって最も大きな変化は「転籍(転職)の可否」と「日本語能力要件の明確化」です。
建設業への具体的な影響
建設業は育成就労制度の対象分野に含まれる予定であり、これまで技能実習で外国人材を受け入れてきた企業は制度移行への対応が必要になります。建設業界への主な影響を整理します。
① 転籍可能化による人材流出リスク
育成就労制度では、以下の4要件をすべて満たした場合に限り、同一業務区分内での転籍が認められます。転籍のハードルは高く設定されていますが、要件をクリアした人材ほど他社からも求められるため、処遇・職場環境の整備が定着の鍵となります。
② 日本語教育・生活支援コストの増加
育成就労制度では外国人材の日本語能力要件が以下の3段階で明確化されます。受け入れ企業側も各段階に合わせた日本語学習支援体制を整える必要があります。
③ 監理支援機関への切り替えと管理コスト
これまでの監理団体は「監理支援機関」へ移行する必要があり、要件が厳格化されます。外部監査人の設置・情報公開の義務化など、透明性の向上が求められます。受け入れ企業は現在利用している監理団体が新制度に対応するかどうかを早期に確認しておく必要があります。
④「育成就労=3年後も残ってくれる」は誤解
制度が変わったからといって、受け入れる外国人材の希望や層がガラッと変わるわけではありません。育成就労生の中にも「3年間働いてお金を貯えて帰国したい」「日本の技術を学んで母国に持ち帰りたい」という人もいれば、「日本語を身につけてこのまま長く働きたい」「将来的に特定技能・永住を目指したい」という人もいます。外国人本人の希望は制度によって決まるものではなく、人それぞれです。
ここで整理しておきたいのが、「制度上のゴール」と「本人が希望する人生設計」は別物だということです。育成就労制度は「日本の人手不足を背景に外国人材を育成・確保する」という制度側の目的で設計されていますが、「3年働いたら国に帰りたい」という外国人に対して日本に残ることを強制するものではありません。
今回の制度変更で大きいのは、外国人の「残りたい・帰りたい」という気持ちを変えることではなく、「残りたい人が残りやすい制度」にしたことです。育成就労生の中にも帰国を希望する人は当然います。採用・定着を考えるうえで「育成就労=3年後も必ず残ってくれる外国人材」という前提で計画を立てると、実態とのギャップが生じやすくなります。個々の希望をしっかりヒアリングしたうえで受け入れ・定着の戦略を立てることが重要です。
特定技能制度との関係を整理する
育成就労制度は単独で完結する制度ではなく、「特定技能1号」へのステップとして設計されています。3年間の育成就労を経て技能・日本語能力の要件を満たした外国人材は、特定技能1号へスムーズに移行できる仕組みになっています。
「参照:国土交通省 建設分野における特定技能の在留資格に係る制度について」
建設業で特定技能外国人を受け入れるには、国土交通省への「建設特定技能受入計画」の申請・認定、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への加入または加入団体への所属が必要です。育成就労制度の施行後も、この特定技能の枠組みは継続・拡充されていく方向です。
企業が今から準備すべき4つの対応策
2027年4月の施行まで時間的な余裕があるように見えますが、受け入れ体制の整備・社内制度の見直しには一定の時間がかかります。「育成就労=全員が長期定着する」という前提ではなく、個々の希望を把握したうえで採用・定着の戦略を立てることが重要です。今から準備を進めることが、施行後の混乱を防ぎ人材確保の競争を有利に進めるカギとなります。
① 現行の監理団体・受け入れ体制の確認
現在利用している監理団体が新制度の「監理支援機関」へ移行するかどうかを確認します。移行しない場合は新たな監理支援機関の選定が必要になります。早期に確認することでスムーズな切り替えが可能になります。
② 賃金・待遇の見直し
転籍要件をクリアした人材は他社からも求められます。同業他社と比較して賃金・福利厚生・有給取得実績などを見直し、「選ばれる企業」としての条件を整えることが定着率の向上につながります。
③ 日本語教育・生活支援体制の整備
育成就労制度では入国前からA1相当の日本語能力が必要となり、修了時にはA2相当(N4相当)の取得が義務づけられます。社内での日本語学習支援・外部日本語教室との連携・やさしい日本語でのコミュニケーション環境づくりを早期に着手することが重要です。
④ 特定技能への移行支援の仕組みづくり
育成就労修了後に特定技能1号へスムーズに移行してもらうための支援体制を整えておくことが、長期雇用につながります。技能検定の受験支援・在留資格変更の手続きサポートなど、移行をゴールと見据えた育成計画の策定が重要です。
まとめ:新制度を人材確保の機会に変える
育成就労制度への移行は、外国人材を受け入れてきた建設企業にとって対応コストが増える一面もありますが、「制度上のゴール」と「外国人本人の人生設計」は別物です。「残りたい人が残りやすい制度」になったことで、長期就労を希望する人材にとっては日本でのキャリアを描きやすくなりました。一方で、帰国を希望する人材も引き続き存在します。育成就労生を一括りにせず、個々の希望を把握したうえで受け入れ・育成・定着の戦略を立てることが、新制度のもとで人材確保を成功させるための出発点です。
2027年4月の施行に向け、早期に体制を整えた企業が人材確保競争で優位に立てます。自社の採用情報や職場環境を国内外に向けて発信したい建設企業様は、ぜひaoiroサーチへの掲載をご活用ください。
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